「父は受刑者、恥ずかしく苦しかった」 塀の中でアート活動を続けるフランス人男性 刑務所でみた父の”別の顔”が転機に

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九州で唯一の女性刑務所が佐賀県鳥栖市にある。ここで、「アート」のワークショップが行われ、6人の受刑者が参加した。

指導したのは、巨大な彫刻作品を手掛けるフランス人アーティストの男性。男性の父親も受刑者だった。

塀の中で活動を続けるのは、自分自身が「塀の中のアート」に救われたから。男性の思いは女性受刑者たちに届いただろうか。

世界の刑務所でワークショップ 受刑者と一緒に作品を制作

今年4月、九州新幹線の新鳥栖駅に、ひとりのフランス人男性が降り立った。現代芸術家として活動するダビッド・メスギッシュさん(45)。改札を出ると、フランス語なまりのある英語でこう話した。

ダビッド・メスギッシュさん(45)
「きょうは刑務所に行きます。とあるプロジェクトをスタートするんです。これがきょう私がきた理由です」ダビッドさんは、廃材となったプラスチックなどを使って、人の形をした巨大な彫刻を制作するアーティスト。作品は、フランスやアメリカ、中国など世界各地の街なかで展示されている。一方、これまでライフワークとして、刑務所で受刑者に芸術を伝える活動も行ってきた。フランスやイタリアなどでは受刑者と一緒に作品を制作したという。

こうした活動を続けてきたのは、ダビッドさんの生い立ちが関係している。

ダビッドさんの父親は、受刑者だった。

「初めて父に会ったのは刑務所の中だった」

ダビッド・メスギッシュさん
「私が生まれた時、父は刑務所にいました。父は囚人でした」

ダビッドさんによると、父親はマフィアのリーダーで長年、刑務所に収監されていた。初めて父親と会ったのも、刑務所の中。ダビッドさんは受刑者の家族ということに長い間、恥ずかしさや苦しさを感じてきた。子どもには到底、自分自身の中で消化することができない複雑で酷な環境だった。

その父親はダビッドさんが22歳の時、抗争で殺害され亡くなったという。父親と一緒に過ごしたのはわずか3年間だけだったが、その中で転機となった忘れられない記憶がある。ダビッド・メスギッシュさん
「ある日、父が刑務所で絵画のワークショップに参加していました。その時初めて、父を囚人ではなく、アーティストとしてみることができたんです」

父親が絵を描く姿を見た日から、ダビッドさんは次第にこう思うようになった。

「自分も芸術家になって、たくさんの人に芸術の良さを伝えたい」ダビッド・メスギッシュさん
「更生するために罰が必要な人もいます。私は受刑者たちが新たな人生をはじめられるようにしたい」

九州で唯一の女性刑務所「鍵はありません」

ダビッドさんは芸術家になるという夢を実現し、フランスの刑務所などでワークショップを開いてきた。日本の刑務所で活動するのは、今回が初めてだ。ダビッドさんが訪れたのは、佐賀県鳥栖市にある麓刑務所。九州で唯一の女性刑務所だ。窃盗、覚せい剤取締法違反、殺人などの罪を犯したおよそ180人の受刑者が収容されている。

初めて日本の刑務所に足を踏み入れたダビッドさん。「刑務所には見えない」とつぶやいた。ダビッド・メスギッシュさん
「ヨーロッパの刑務所に比べたら、比べものにならないくらいきれい。ヨーロッパの刑務所ではネズミがはしりまわっているのを何度か見ましたよ」

案内役の刑務官が説明する。刑務官
「特徴的なのは、部屋の鍵がないということです。職員と受刑者の信頼関係を大切にしています。落ち着いた生活がないと受刑生活が始まらないので。安心できる落ち着いた環境を提供するというのも日本の刑務所の役割です」

翌日、いよいよ日本の受刑者と対面する。ダビッド・メスギッシュさん
「あしたは良いスタートを切りたいです。受刑者たちに興味を持って、楽しんでもらいたいです」

40代~70代の女性受刑者

ワークショップの撮影と取材は、刑務官立ち合いのもとで行われた。

ダビッドさんのワークショップに参加するのは40代~70代までの6人の受刑者。このうち2人の受刑者に「罪名」を聞くことが許可された。

40代の女性受刑者は「覚醒剤取締法違反」。

そしてもうひとりの60代女性受刑者は、「答えたくない」と話した。

ダビッドさんはまず、自らの生い立ちについて語った。ダビッド・メスギッシュさん
「わたしが初めてお父さんに会ったのは刑務所でした。なぜ、囚人の家族も苦しまなければいけないのか、私はいつも自分自身に問いかけていました」「受刑者家族」としてこれまでどんな思いで生きてきたのか。ダビッドさんの言葉が、自らの家族が置かれた状況と重なったのだろうか、何人かの受刑者は涙を流した。

スマートフォンに戸惑う受刑者たち

ダビッドさんの作品は、顔などをスマートフォンでスキャンすることからスタートする。読み取ったデータをパソコンにとりこみ、形を造り出していく。ダビッドさんが自分のスマートフォンを取り出すと、受刑者たちが戸惑う様子を見せた。

長期間、刑務所の中にいるため、スマートフォンを目にすることも、扱いも慣れていないのだった。

つくった彫刻作品、どこに置きたいですか?

今回のワークショップは時間が限られている。

ダビッドさんは、仮に自分の顔を模した彫刻作品が完成したら、その作品をどこに飾りたいか、その場所を画用紙に描くよう指示した。ダビッド・メスギッシュさん
「自分で自由に考えてください。どこに自分の彫刻を置きたいですか?」受刑者
「山口県光市です。故郷です」受刑者
「これは桜島です。力強さを感じる場所なので、自分の彫刻アートを一番どこに置きたいかと言われて、一番最初に浮かびました」受刑者
「熊本の阿蘇の草千里です。好きでよく癒されに行っていたので。自然の中に置いてほしいな」受刑者のひとりは、「学ぶこと、新しいことにはいくつになっても挑戦できるんだなと思って希望が持てました。楽しかった」と話した。

「何かを望んでいるなら、それはあなた次第」

ダビッドさんさんは、芸術の力で更生の道に光を灯したい、と考えている。

ダビッド・メスギッシュさん
「もし、何かを望んでいるなら、それはあなた次第です。たとえ今が困難な状況でも方法は必ずあります。忍耐強く、目標を思い描き続ければ、実現します。私にもできたので彼女たちもできるでしょう。もしかしたらいつか、この中の誰かがワークショップをしているかもしれません、私の代わりに」6人の受刑者たちは、ダビッドさんの言葉とアートから、何を感じ取っただろうか。

RKB毎日放送 記者 松村かれん

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https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rkb/1904523

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